| Q: | 陸上って個人競技ですけど、全日本大学駅伝を目指すとなると団体競技になるじゃないですか。そのことについてはどのように思っていたのですか? |
| A: | 真剣に取り組むヤツが8人いればいいと思っていたし、 そうでない人に無理にやらせる必要はないと思ってた。 |
| Q: | 今思うと違うんですか? |
| A: | 健二さんにいわれてさ、「同じような考えの人間が揃わないのであれば、目標を共有できてないヤツを口説いてその気にさせることが必要じゃないの?」と。 |
| Q: | なるほど。切り捨てるのでなく、やる気を出させて導くことが重要だと。 |
| A: | そうそう。実はそれってすごく難しいんだよね。ついて来ない人を切り捨てるのは超簡単。 導いてあげるという大きな役割がオレにはあったんだけど、できなかったな・・ |
| Q: | 今だからそう思えますけど、大学生の時にそこまで大人になれないですよ。仕方ないです。私たちにできるのはHPを通してそれを伝えることくらいですね。 でもイズミさんの背中を見て育った選手も多いと思いますよ。私みたいに。 |
| A: | 大学院に進み、学部生でやる気のない選手を見かけても、 「キャプテンがいるのに、あんまりでしゃばってもいけないな」と思って遠慮してしまう場面もあった。でもそこはチームの一員として思ったことはいうべきだった。そういうところが徹し切れなかった。 |
| Q: | 先日仙台に行かれたんですよね? |
| A: | その時たまたま大学の現役選手と接する機会があったので、そういう考え方は伝えた。 わかってくれたと思うよ。 |
| Q: | 中学生の時はワルだったって、ホントなんですか? |
| A: | ホントだよ。6人グループで。授業サボったりしてたし。悪いことはたくさんしたよ。タバコも吸ってたし。 |
| Q: | マジっすか??想像できないですけど。ではなんで高校で陸上部入ったんですか? |
| A: | 中学の時も陸上部だったよ。800mやってた。でも2つ下の妹の方が速くてさ。 とはいっても妹は中3で2’20”くらいで走って全国レベルだったけど。 |
| Q: | 妹さんすごいですね。兄貴としてはライバル心みたいなのはあったんですか? |
| A: | それは全然なかった。妹のことはすごく応援してたし、がんばってほしかった。 陸上は結構まじめにやってた。中学の最後の試合が終わった時は泣いたね。悔しくて。陸上で3回泣いたことがあるけど、その時が初めてだな。 高校入ってからはあんま陸上やる気なくて、最初は硬式テニス部だったんだ。 |
| Q: | ・・知りませんでした。 |
| A: | 中学の時の先輩が3000mSCでインターハイ出たのを知って、それからかな、陸上部入ったのは。 |
| Q: | なるほど、だから3000mSC中心だったんですね。僕はソウさんの影響を受けましたけど。 |
| A: | 最初から9分16秒という具体的な数字を目標にしてた。その先輩のタイムなんだ。 でも高校の練習がきつくてね。吐いたりして。そこで2回目の泣きがあった。 |
| Q: | 僕が入学してソウさんに会ったときはすごく強かったですけど、1年目はそんな苦労があったんですね。実際にインターハイ出場はチャンスでしたよね? |
| A: | 2年の秋で9分31秒が出て現実味を帯びてたんだけどね。県予選で障害に衝突しちゃって、終わった。。 |
| Q: | よく覚えてます。僕が予選の2組目で準備してたら、すごい音が聞こえて。見るとソウさんが倒れてて、起き上がるところでした。あの後は必死で応援しました。 |
| A: | それが終わって3回目の泣きがあった。 ま、何か1つのことに打ち込めるものがあるといいよね。俺の場合は陸上だったけど。でもあんまりがんばりすぎないことも大事。 とはいってもチャンスが来たら絶対に諦めないでがんばり抜くことも大事だね。難しいけど。 |
| Q: | そもそもなんで高校で陸上部に入ったの?中学はサッカー部なのに。 |
| A: | 小学生の頃から市の大会に出ててさ、優勝の味をしめちゃったのかな。 でも何より走るのが好きだったから。それに陸上部が強いって聞いてたし。 |
| Q: | 小学生の頃から大会出てたの? |
| A: | そう、市の大会が近づくと校庭で練習したんだ。母親がラップ取ってくれて。 中学の頃はサッカー部の練習が終わった後走りこんでたね。 よく試合内容が悪かったりすると校庭10周とか走らされたでしょ?でもあれも全然苦じゃなかった。「いってきまーす!」って感じだった。 |
| Q: | すごいね。お母さんは熱心で栄養士だし、ホントに走るのが好きだったんだね。中学の時の練習内容は? |
| A: | 叔父さんが西京高校の女子の監督やっててさ、電話して練習メニューとか聞いてやってたよ。毛細血管を発達させるのに適した負荷(10秒間に脈拍25回くらい)もその頃から知ってたんだ。 |
| Q: | いいねー、うらやましいよ。そら強いわな。毎回優勝してたの? |
| A: | 結構勝ってたね。でもさ、埼玉栄にいた西澤さんって覚えてる?中学2年の時かな、3年の部にあの人がいてさ、すんごく強くて全然歯が立たなかった。あの時に陸上専門の練習しないと勝てないんだなって、思い知ったよ。 |
| Q: | は?、高校入った時のレベルが既に全然違うわけだ。では高校を振り返ると? |
| A: | 1年の時はどんどん記録が伸びてたけど、2年で苦しんだ。全然伸びなくてさ。3年の春過ぎくらいかな、陸上部から離れて1人で家の近くのクロカン走るようになって真の楽しさに目覚めたんだ。 |
| Q: | 真の楽しさ? |
| A: | クロカン走ってると、大自然の中でいかに自分が小さい存在かっていうのを思い知ったんだ。人間て誰でも自意識があってさ、自分が大きい存在だ、みたいに思ってるでしょ?クロカン走ってるとそれが無くなってすごく気分良く走れるんだ。 今まで自分が陸上をやってるって感じだったんだけど、自分の中に陸上が確立された、っていうか。そういうとカッコいいけどね。 |
| Q: | 悟ってるね。勉強になります。 では何か反省事項があれば。 |
| A: | 2年の時苦しんだけど、負けてもタイム出なくても笑い飛ばせるくらいが良かったな。また次やりゃいいや、みたいな。ストイックさの中にも明るさを持つことって大事だと思う。何でも前向きに自分をコントロールできるようになることだね。 |
| Q: | 競技から離れて5年以上経つけどまだウェイトは気にする? |
| A: | もちろん。やっぱり太るの嫌だし、手首で判断できるんだ。体が絞れている時は手首をつかんでも骨の感覚しかない。今は、まぁ普通かな。 |
| Q: | 手首?それは初耳だね。自分の場合は目を下に向けて頬の肉が見えたらやばい。実は今ちょっと見える・・ さて長距離という競技をやったお陰で身についたこととかって何だろう? |
| A: | 高校・大学という16?22才という時期に陸上をやり通せたことはすごく良かったと思う。人格を形成する上で非常に良い影響を受けた。陸上だけに限らず、何か1つをやり通すってすごく大切なことでしょ。それが今の仕事や生活にも役立ってると思うし。 手抜きしようと思えばいくらでもできるけど、何より自分が見てるし、中途半端なことはできないよね。それは長距離特有だと思う。全部自分に跳ね返ってくるからね。 |
| Q: | なるほど。では選手としての満足度は? |
| A: | 実はそんなこといってても後悔と反省ばっかりだよ。後悔:満足=8:2
くらいかな。ああしてば良かった、こうしておけば良かった、って。個人としての後悔と長距離キャプテンとしての後悔がある。 実は劣等感が結構あって自分で勝手に限界を決めてたこともあるよ。自分はこんなモンだろ、とかこいつには勝てないな、とか。朝練はしてなかったし。自分の体の本当の強さにも最後の方になってやっと気づいたし。キャプテンとしてもっと他の選手と個別に対応もできたろうし。挙げたら切りないよ・・ |
| Q: | いやいや強かったよ。特に4年生の夏は。あの秘密は何? |
| A: | 就職も決まったし陸上だけに集中できるようになった。終りも近づいているし、迷いが無くなった。苦手な朝も走るようになり、暑い夏場だったけど1日3回走ってた。親に死ぬんじゃないかって心配されるくらい走った。そこで気づいたんだ、自分の体の強さに。これだけやっても大丈夫だったんだって。客観的に見ても5000m14分台くらいで走れたと思うよ。 |
| Q: | たとえキャリアの最後の方でもそのレベルまで行けたことは満足には入るんでしょ? |
| A: | いや、そうでもないかな。そこで中途半端に見えちゃったから余計後悔が大きくなったかも。もっと早く自分が思ってた限界を突破できたかもな?って。 |
| Q: | あー、そうなんだ。現役時代の自分を自分でコーチしたいとかって思わない? |
| A: | 思うね。 |
| Q: | でもそんなことできないんだから何かしないとね。部の代が変わる時にノウハウの引き継ぎとかってなかったでしょ?うちらも後輩に対して何もやってないし。毎日見てくれるコーチがいない部こそそういうのをきちんとやる必要があると思う。代が変わる度にまた1から作り上げないといけなくなってしまうんだよね。 さて、では印象に残ってるレースは? |
| A: | 大学1年の時の全日本大学駅伝。体の調子も良くて軽かったし、大舞台ということもありすごく印象に残ってる。全国のレベルを肌で感じ取れた。1年のときは先輩に連れて行ってもらったものだし、あの大舞台をみんなに味わってほしくてキャプテンがんばってたんだけど、ダメだった。 あとは4年時の全日本大学駅伝予選のハーフマラソン。残り1キロのところで脱水症状で倒れた。あと少し酸素ボンベが遅かったらマジで死んでたよ。舌がどんどん奥の方に入って来て、意識がどんどん薄れていって死を感じた。昔の記憶が走馬灯のように駆け巡るってアレ本当だね。 |
| Q: | ・・そこまでひどかったなんて知らなかった。 |
| A: | 本当にいろいろ反省と後悔ばっかり浮かんじゃうよね。でも陸上競技を終えて自分を客観的に見たときにそう感じている人って多いと思うよ。俺らのレベルの人って特に。だから今陸上競技に携わっている人には頑張ってほしいとなおさら強く思うよね。 |
| Q: | いやいや、初めてかもね、こうやって二人で話すの。お互い意地っ張りの面があるからライバル視して敬遠してたんだろうね。 |
| A: | それはありますね(笑)。でも土屋さんのやり方見てて面白いな、とは思ってました。同じ長距離でもアプローチの仕方が全然違いましたし。 |
| Q: | ナオナオのアプローチの仕方とは? |
| A: | 僕のやり方ってまず距離を踏むことが大前提で、月間600キロ走ればその練習強度に関らず、5000m14分台で走れるという目安はありました。身近にすごい量をこなすのりぴー(私の2つ上の先輩)という目標がありましたし、そのやり方が自分にも合ってると思ってやってました。でも土屋さんは違いましたよね? |
| Q: | まず1000mをきちんと走れること、という前提があって、次に1500m。1500mが走れなければ5000mで勝てないと思ってた。そしてその延長に10000m、ハーフマラソンがあると思ってた。1000m→1500m→2000m→3000m→5000m→10000m→ハーフマラソン、ってテリトリーを広げて行こう、って感じだったかな。2000mで終わっちゃったけど。 |
| A: | 実は今そのアプローチをしようと思ってて1000mを2’35”くらいで走りたいんですよ。そしたら5000mのレースで2’45”で入っても大丈夫かなって。今後の自己ベストの目標は、 1000m2’35”、2000m5’35”、3000m8’30”、5000mは・・お楽しみに。 |
| Q: | 面白いね。1000mを2’35”で走れて徐々に距離を伸ばせれば5000mいいタイム出るだろうね。ナオナオが1?2年生の頃、15’01”で走ることもあれば17’かかることもあったでしょ?あれは何? |
| A: | まだ手探りだったんです。自分の波長が合うところが見つけられなかった。でもどんどん未開の部分に踏み出していく勇気はありました。すごく速いタイムでもどんどん突っ込んでみる。失うものは何もないですから。そしてある時、タイムを特に設定しないでペース走をやった時に見つけたんです。速いタイムでもきつくなく走れる部分を。それからは結構安定していいタイムが出るようになりました。でも今でも残念なのがそのさらに上の段階を見つけられなかったことですね。だから今はちょっと違うアプローチをしようかなと。 |
| Q: | そうやって試行錯誤して練習するのって単純に楽しいよね。試合前ってどうやってメンタル作ってたの? |
| A: | 僕の場合はエースの自覚です。自分がやらなきゃ誰がやる、って。後は徹底的に相手を見下します。 |
| Q: | す、すごい・・。質問を変えよう。キャプテンとして部をどうやって強くしようと考えてたのかな? |
| A: | できるだけ「こうするな」というのでなく「こうした方がいいんじゃないか」っていう言い回しを心がけてました。でも自分がこれだけやってるんだからお前らもガタガタいわずやれよ、っていうスタンスはありましたね。そこはちょっと子供だったかなと反省してます。もっとそれぞれの選手に合った接し方ができたかなと。 後は、もっといい循環を作りたかったですね。誰かが壁破ったら、あいつができるんだったら俺も、そして俺もってどんどん続いてくれるような循環を作りたかったですけど。 |
| Q: | そうやって刺激し合って相乗効果で強くなれるのが部で活動する大きなメリットだもんね。走り方で何か工夫があれば聞かせてください。 |
| A: | もちろん水平に走ることですが、僕の場合腰が入っていない水平移動だったんで今はきちんと腰の入った水平移動を身に付けようとしています。 |
| Q: | 元SB食品の平塚さんはすごくいいお手本だと思うよ。背骨のアーチがきれいに出来てて理想的な走りだった。あとは今(2004年現在)だったら日清食品のジュリアス・ギタヒ。 |
| A: | あー、なるほど。僕はきれいな水平移動できてなくて14’47”で走れたのだから改善されればもっといいタイム出るだろう、って思ってます。 |
| Q: | さっすが。今後何かやりたいこととかってある? |
| A: | 実は僕も陸上のクラブ持ちたいです。先日テレビ見てたらサッカーの稲本を育てたプログラム(日本サッカー協会のトレセン活動のこと。現役を退いたJリーガー等が指導している。)の番組やってて小学校4?6年生をいかに育てるかが重要みたいなこといってました。練習終わったらすぐに食事取らせてました。そうやって陸上選手を育てる環境ってないじゃないですか。その後自分に合う競技に出会って陸上を離れてしまってもそれはそれで良いと思う。結果的に陸上やってほしいですけど。 |
| Q: | そういう環境で育ってどんどん世界目指してほしいね。佐久長聖の高校生とかもどんどんワールドデビューしてほしいし。さて、そろそろ終電かな。今日はありがとう。 |
| A: | いえいえ。また別の機会にお話しましょう。 |
| Q: | イズミさんでも試合前、不安になったり怖くなったりすることってあるんですか? |
| A: | 当たり前じゃん。ウォーミングアップしてる時なんて止めて帰ろうかと思うこともあるよ。さすがにスタートラインに立つ時にはそれはないけど。 |
| Q: | 試合前の数日間はどうですか? |
| A: | 試合前はあまり深くは考えないかな。むしろ楽しみに思っている。レースのイメージくらいは当然して3パターンくらいは想定しておくけど。最初の1000mはこれくらいで入って、3000mはこれくらいで通過して4000mはこうで最後はこう行く、って感じで。 当日のアップ中は結構緊張する。でもその緊張を楽しんでいることもあるけど。 |
| Q: | なかなか日常生活でそういう緊張なんてないですもんね。選手特有のものですからね。 |
| A: | そうそう、走ってなかったらこんな緊張感味わえないし。 |
| Q: | レース前の自分の気持ちを作る際に何か特別なことってされてますか? |
| A: | 特にないな。レースシューズに履き替えて靴の紐結んでるくらいからはあまり迷いもなくなってくる。 |
| Q: | それは何なんですかね。習慣というか流れというか。アップの内容は毎回同じですか? |
| A: | 同じ。慣れかな。 |
| Q: | 体のケアは何かされてますか? |
| A: | 腰は気をつけるし、何か体のバランスが崩れてると感じたらまず腰を疑う。低周波治療機で揉む。腰は重要だよ。 |
| Q: | ですよね。触ればだいたい状態はわかりますし。睡眠時間はどれくらいですか? |
| A: | 普段は6時間くらい。レース前日は4?5時間。ぐっすり眠らないためにわざと少なくする。 |
| Q: | それはあまり副交感神経を優位に立たせないため? |
| A: | そう。ぐっすり寝ると交感神経が優位になるまでに時間がかかるから。別に1日くらい寝なくたって大丈夫だし。 |
| Q: | 普段はどのようにリラックスされてますか?イズミさんはあまりイライラしたり急いだりするってイメージがないのですが。 |
| A: | 普段はすごくだらけてる。だからあまりストレスなんてない。夜走るのがリラックスかな。 |
| Q: | 練習がリラックスになってるんですか。それはいいですね。練習内容はどんなことをされているのですか? |
| A: | 平日はほぼ毎日夜60分jog。土曜日に200mや400mのインターバルトレーニングを入れる。月間300キロ前後かな。 |
| Q: | それだけ?! |
| A: | そう、いかに効率よく強くなるかを考えてやってる。社会人になって練習時間が取れないならそれなりのやり方があると思う。量より質を追求して強くなろうとしている。 |
| Q: | 現在の目標は何ですか? |
| A: | 5000m14分40秒切り。そのためには3000mを8分48秒くらいで通過しないとなんだよね。それが難しくてこのままの練習でいいのか迷うところだけどいけると思う。 |
| Q: | メンタルの根底にあるものって何ですか?もっと強くなりたいとか。 |
| A: | もっと上がいるし、もっと速くなりたい。怪我しても精神的に折れずにつなぎとめておければ何とかなる。 |
| Q: | それを持ちつづけていられることがイズミさんの強さの秘密だと思います。他に何か若い衆にいいたいことってありますか? |
| A: | 社会人になっても止めないで走りつづけてほしい。学生の時のような練習なんてできないと思って諦めてしまわないで、社会人になったらなったでそれなりのやり方がある。 |
| Q: | ありがとうございます。私も選手に戻りたくなってきました。 |
| A: | 是非。俺が止める前に。 |
